Twitter 300字ss  お題:「火・炎」
過去の幻では満たされず

2016.12.03


 マッチを擦る。

 一つ目、小さな火に懐かしさを覚えた。
 小さい頃、家族で花火をしたことがある。色とりどりの火花が生む幻想的な光景に目を奪われ、そして夢のような時間は長く続かないことを知った。
 あっけなく地に落ちた燃えカスが、あの日の線香花火を思い出させた。

 二つ目、徐々に勢いを増していく炎をじっと眺める。
 高校時代が一番楽しかった。まだ何者でもなかった頃、日々に流される中で爪痕を残そうと必死だった。友人たちと馬鹿騒ぎしては、一緒に叱られた。
 彼らとはもう、何年も会っていない。

 三つ目、燻って朽ちていくだけの思い出なら、いっそ華々しく、跡形もなく。

 大きく燃え盛る建物の前で、近づいてくるサイレンの音を聞いていた。


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Copyright ©2016 Maki Tosaoka