眠る樹海堂 top

---

Twitter 300字ss　　お題：「水」

---

　水を怖がる私を、近くの河原まで引っ張っていったのは、ひとつ上の姉だった。
　姉は大きな石の上をひょいひょいと渡り歩いて向こう岸へ。
「ほら大丈夫」
　何度か声がかかる。それでも首を振る私に呆れて、姉はそのうち近所の子と遊び始めた。
　いいな。
　いやだと言っていたくせに、私は楽しそうな様子がどうしても羨ましくなって――


　なんとなく昔のことを思い出し、向こう岸へ飛び移ろうとして、見事に足を滑らせた。
「何しとるんじゃお前は」
　たまたま通りかかった幼馴染は、ひとしきり笑ったあとで助け起こしてくれた。
　頭からずぶ濡れになった私に、荒い動作でタオルが被せられる。
「水遊びには時期が外れとるぞ」
「……知ってる」
　それ前にも言われた。

---

既刊「かみさまの森」の関連作だと考えれば
川とか彼岸とかそういう含みが若干ある気もする