第55回へキライ  お題:「さみしいひと」
仮面少年

2017.12.02


 同類だ。
 何となくそう思った。本当に根拠なんて何もないけれど、強いて言えば笑い方が似ていた。いや、俺は滅多に笑いはしないけれど。
 けれども、俺が浮かべるしかめっ面と、彼の笑顔は、同種のものだと思えた。
 結局のところは本心を巧妙に隠すための仮面なのだ。彼は微笑み、俺は眉間に皺を寄せる。憤ったことも、傷ついたことも、波立つ感情を決して他者に悟られぬように。

 彼は今日もヘラヘラと笑っている。
 初対面なら悪印象は抱かないだろう。しかし、何度も顔を合わせれば、変わらぬ笑みが不気味にも思えてくる。
 本心をさらけ出すことはできず、空っぽにもなれず、宙ぶらりんのまま笑う男が、どうしようもなく哀れに見えた。
「気持ち悪くねえの」
「んー、何が?」
 毒気など微塵もない顔は、俺の問いかけにも曇らない。
「君は気持ち悪いの?」
 問い返されて気が付いた。気持ち悪いなんて感情、自分だって持ち合わせていないことに。
 つくりものの顔を見せることに慣れきっていたのは、俺も同じだった。



あの頃はまだ、揺れていた
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