Twitter 300字ss  お題:「雲」
私と光芒

2017.09.02


 仕事道具を背負い、子供時代に通った家路を懐かしみながら歩く。
 途中で公園に立ち寄った。高台にあり、柵の向こうに町全体が見渡せる。遊具は少々古びても、その風景は色褪せていなかった。
 少し遠くで小学校のチャイムが鳴った。今は人が少ないが、もうすぐ子どもたちの声で賑わうだろう。
 バッグから使い慣れたカメラを出して、ファインダーを覗く。
 ランドセルを背負って家に向かう夕暮れどき、雲間から光が差し、薄いカーテンが空を覆ったようになる。薄明光線、天使の梯子……初めてこれを見た幼い自分は、当然そんな呼び方なんて知らずに勝手な名前を付けた。
「光バリアーだ! 宇宙人が来るぞ!」
 空を指差し、はしゃぐ少年達の声が耳に届いた。



あの日の高揚と今日の感動は同種のものであればいい。
Copyright ©2017 Maki Tosaoka