Twitter 300字ss  お題:「色」
赤の反論

2017.05.06


 視界の端にうつる赤色に、思わず舌打ちが出た。
 目立つからやめろ、という忠告を今日もコイツは無視するつもりらしい。
 兄から贈られたという赤い外套は袖丈が長く、少女の指先がかろうじて覗くぐらい。サイズが合ってないせいでいっそう幼く見えるが、それでも気に入っているようだ。
「相変わらずガキくせえ格好しやがって」
 こちらのぼやきはしっかり届いたらしく、少女は手元の端末を操作して何やら反論を打ち込み始めた。
『子どもが子どもらしい格好をしていない方が目立つと思いませんか?』
 中途半端に頭が回るところが、少女の兄に似て小賢しい。
『それに』
 その続きを読んで、諦めと妥協の息を吐く。

『返り血が付いても目立たないでしょう?』



仕事柄、合理的な考え方。
Copyright ©2016 Maki Tosaoka