Twitter 300字ss  お題:「飾る」
お飾りの女王

2017.03.04


「穀物の収穫量だが……」
「あちらの者が答えます」
「税制の見直しは……」
「詳しい者を連れてまいります」
 私が問いに答えるたびに、隣国の年若い王は顔を険しくする。
「期待はずれだな。俺と同い年で女王だというから、どれほどの器量かと思えば……ただのお飾りか」
 男の秀でた手腕は聞き知っている。前時代的な悪しき慣習を叩き壊し、陣頭に立って政を行っているらしい。
 私は違う。難しいことは周囲に任せきりだ。そう告げれば、眉間の皺がますます深くなった。


「陛下、こちらはいかがでしょう!」
「期待通りです」
 嬉々として政策を寄越す勤勉な臣下を労い、褒美を与え、ただ微笑む日々。
 私は何もしないまま、それでも国の頂点に飾られている。



方法にはこだわらない。うまくいくのなら。
Copyright ©2016 Maki Tosaoka