Twitter 300字ss  お題:「火・炎」
火曜日の女

2016.12.03


 可愛いとは思った。しかし、それは外見だけ。くりっとした目がこちらを見て、勝ち誇ったように細められる。やな感じ。
 同じ建物から並んで出てきた二人。揃って湿った髪。何をしていたかは明白だが、いきなり声を掛ける勇気はない。
 結局、男が一人になったところを見計らって問い詰める。
「ケイタ! あの子、なんなの」
「あいつ? 火曜日の女」
 悪びれもせず言う啓太に、嫉妬の炎は出鼻をくじかれた。
「お前は水と金だろ?」
「私、火曜も一緒がいい」
 週に二日会えても、知らないところで取られるのは嫌だ。
「勝手にすれば?」
 興味なさげな啓太の言葉にハッとした。
 確かに、啓太よりも先に言うべき相手がいる。



「お母さん! スイミングの日、変えて!」


さて、母の返事は……?
Copyright ©2016 Maki Tosaoka