Twitter 300字ss  お題:「子」
子供騙しだって分かってる

2016.05.07


 僕の部屋に二人きり。彼女は甘えるような仕草で僕の膝に乗り、上目遣いでこちらを見つめる。
「ごめんね」
 彼女は柔らかな体を僕の方に摺り寄せながら、今日も謝罪を口にした。
 それが口先だけなのは嫌というほど知っている。普段はそっけないくせに、こんな時に限ってサービス過剰なのがその証拠。つまるところ、頬を撫でる手の優しさと、ささやかな贈り物で懐柔できると侮られている。
 だが、ここまで分かっていても負けるのはいつも僕だ。
「ねえ、ゆるして」
「……仕方ないなあ」
首に回された腕に、結局今日も白旗を揚げた。

「ありがとう、パパだいすき」
 甘え上手な五歳の娘は、折り紙で作ったプレゼントを免罪符に、今日もいたずらに励んでいる。


悪女に騙される人のいい青年、ではなく単なる娘に甘いパパ。
Copyright ©2016 Maki Tosaoka